もうすっかり葉っぱだらけになってしまった桜並木。
道路の真ん中を自転車で走る。
雨の上がった夜は、いい匂いがするから。
信号無視して大通りを、中央分離帯を歩いてみたくなる。
死ぬときに、いい匂いを嗅ぎたいな。
葉っぱと土の湿った匂い。
クチナシの花が、遠くから誘ってくる匂い。
いつかの散歩を思い出して、たのしかったなぁなんて笑いながら。
帰り道、家の近くで部屋を見上げる。
カーテンの隙間から少しだけ見える灯りが、こんなにも安心するものかと思う。
贅沢な光だ。
何よりも贅沢な光。
私は恵まれているのだから、大切なことを大切にしなくてはいけない。
大切な人たちを、悲しませないように。